別所実正作 阿古陀形 二十四軒総星兜
(あこだなり にじゅうよんけんそうぼしかぶと)
「美は、線に宿る。」
この甲冑師の作品を前にして、そう感じました。大胆でありながら繊細。伸びやかな鍬形の曲線は、空間に余白を描き、見る者の視線を導きます。
洗練された設計と、計算された均衡。重厚でありながら軽やか。装うというより、彫刻のように佇む兜です。
楕円を描く阿古陀鉢の端正な姿。丸みを帯びながらも引き締まったその形状は、柔と剛をあわせ持つ独特の緊張感を生み出します。
極小の鉢に、二百四十余りもの星を打ち込んだ総星仕立て。一つひとつが均整を保ちながら整然と並ぶ様は、精緻という言葉を超え、もはや執念にも似た美意識を感じさせます。小さな星の連なりが光を受け、兜全体に細やかな陰影と奥行きをもたらします。
鍬形台には、唐草の透かし彫り。途切れることなく伸びゆく唐草文様は、繁栄と永続の象徴。
繊細な透かしが重厚な造形に軽やかさを添え、空間に上質な余白を生み出します。
吹き返しには、沢潟の印伝。沢潟は古来「勝草」とされ、勝利を祈願する武将文化の中で尊ばれてきた文様です。その意匠をさりげなく配することで、力強い願いを静かに宿します。
華やかに誇示するのではなく、細部に宿る密度で魅せる。
精緻と祈りが結晶した、格調高い兜です。
※手づくりのため柄行や色調などが画像とは異なる場合がございます。
※屛風や飾り台など装飾品を含めた価格になります。
寸法:間口38㎝×奥行33㎝×高さ35.5cm