別所実正作 牡丹図 阿古陀形之兜
(ぼたんず あこだなりのかぶと)
「美は、線に宿る。」
この甲冑師の作品を前にして、そう感じました。大胆でありながら繊細。伸びやかな鍬形の曲線は、空間に余白を描き、見る者の視線を導きます。
洗練された設計と、計算された均衡。重厚でありながら軽やか。装うというより、彫刻のように佇む兜です。
阿古陀形のふくらみを帯びた鉢に、牡丹の彫金が華やかに咲き誇る一作。
随所に施された牡丹図は、ただの装飾ではなく、兜全体に気品と格をもたらす意匠として息づいています。
牡丹は「百花の王」と称される富貴の象徴。その花弁を一枚一枚丁寧に刻み上げた彫金は、光を受けるたびに繊細な陰影を描き出します。
とりわけ大鍬形に施された透かし彫りは圧巻。大胆な輪郭の内側に、精緻な牡丹文様を彫り抜くことで、重厚な造形に軽やかな抜けを生み出しています。力強さと優美さが、高度な均衡の上に成り立つ構成です。
吹き返しには、花菱文の印伝模様。規則正しく連なる文様が、牡丹の華やぎを引き締め、全体に端正なリズムを与えています。
背後には、京唐紙による薄萌黄色の瓢箪図の屛風。柔らかな色調と吉祥の意匠が、兜の華やぎを包み込み、空間に穏やかな格調を添えます。
優美でありながら、決して甘美に流れない。
彫金の緻密さと造形の強さが響き合う、品格あふれる兜です。
※手づくりのため柄行や色調などが画像とは異なる場合がございます。
※屛風や飾り台など装飾品を含めた価格になります。
寸法:間口38㎝×奥行33㎝×高さ35.5cm